粘液を吐き出すアナゴはヌルヌルしていて作業するにもコツがいる。
 意外なことに干し場はまったく生臭くない。

 「ここの港を出るのは午後3時頃。夕方前に漁場について、エサを入れた胴を沈める。水深は大体、100mから130mだなあ。1時間位たってから胴を揚げるども、 100個近くも入れてるもの、時間はかかるな。港に戻ってくるのは朝の2時頃だ」 と澤木さん。
 港では奥さんのキミさんが待ちかまえ、澤木さんと乗組員とキミさんの3人で、明かりをともした船の上で作業が始まる。キミさんは太いステンレスの棒にヌルヌルしたアナゴを刺し続ける。澤木さんはその棒を作業台に掛け、両手に力を込めて上から下へとしごく。「こうやって表面のヌメリと腹の中のものを全部しごき出すんだ」と澤木さん。しごき終えたアナゴは乗組員が岸壁に作られた干し場へと運んで吊るす。
 「陽が登る前に全部吊るさねばなんねから、大漁の時だば休む間もねえよ」とキミさん。全て吊るし終えたのは午前4時半だった。
 この棒アナゴのファンは多い。しかし、屋外で干すために天気を見ながらの出漁となり、生産量は限られている。「なんぼ晴天が続いても、今度は父さんの体力が続がねから、毎日は出漁できねしな」とキミさん。棒アナゴは幻の味になりつつある。
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