松皮もち

 赤松の薄皮から作る天然の着色料
 大変な手間と時間をかけて仕上げる伝統のもち

松皮もち



 江戸時代から作られていたという松皮もちの製法が今に伝えられているのは、鳥海山の麓に広がる由利本荘市の鳥海地区や矢島地区など、ほんの一部の地域。その誕生のきっかけは、天保・天明の大飢饉のころに救荒食物として工夫されたという説。また矢島藩の武士たちが兵糧攻めに備えて作った食べ物という説もあるが、いずれも定かではない。
 この松皮もちが現在まで伝えられてきた理由は、その美しい色あいにある。ちょっとくすんだような赤紫色。所々に見える黒っぽい筋はアカマツの皮の繊維。素朴でほっとさせるようなこの色こそが、松皮の特徴だ。伝統の製法を受け継いできた地域では、昔から3月の桃の節句のひしもち作りに利用してきたという。白はもち米のみ。緑はヨモギの葉。松皮で赤紫。これで3色のひしもちができあがる。しかし昭和30年代以降、合成着色料の普及と共に、手間のかかる松皮もちを作る家庭は極端に少なくなってしまった。
 「鳥海町長坂、松皮もちの会」が発足したのは昭和55年ころ。以来、少量ではあるが定期的に松皮もちを作り続けている。「とにかく一番手間のかかるのは、松皮集めとその下処理だな。ナタで赤松の表面の固い皮をはいで、その下にある薄皮を丁寧に削り取って集める。道具はナタ1本だがら初心者はなかなか難しいべな」と代表の村上明子さん(66)はいう。
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