「煙の出るいぶり小屋の中の作業だけが紹介されるども、大変なのは、その前の作業だな。寒い畑で大根を収穫して、水で洗って泥を落とす。それを作業場に運んで、縄で編まねばいげねがらよ」と高橋さん。それをいぶり小屋に運んで、いぶし始める。
 天井に10本ほどの大根を編んだ縄を何十本も掛け、その下で火を焚く。薪は香りの良い桜で、炎はできるだけ小さくする。その方が煙がよく出て、薪も長時間にわたって燃え続けるからだ。「干し上がるまで焚き続けるもんだがら、火の扱いには特に気を使うな。昔はあちこちのいぶり小屋が火事になったもんだ。まずは寝る前に火の状態を確認して、夜中の3時頃にも起きて火をみる。これは毎日だ。それに火の上は早く干せるども、小屋の端の方は乾きが遅い。だがら、時々、平均して乾燥するように吊るす場所を動かしてやらねばいけねんだ」
 作業の始まる10月下旬頃はまだまだ気温も高く、3、4日で干し上がるが、雨や雪の日が多くなる11月下旬頃からは1週間近くもかかるという。いぶし終えて黒くしわしわになった大根は表面を軽く洗って塩や糠などで漬け込み、30日から40日ほどで出荷可能となる。
 「うちでは昔ながらの秋田大根と青首大根の2種類を漬けているども、パリパリ仕上がるのは秋田大根の方。歯の丈夫な人は秋田大根の方が好きだっていうども、年とって歯が悪くなった人は柔らかく仕上がる青首を注文してくるなあ」
 大根のいぶし作業は例年、12月初旬まで続く。


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